中部地方のある新興工業都市Y。手塚二郎は、そこのミシマ・デパートに勤めていた。「出世がし()たい。金がほしい」というのが彼の口ぐせだった()。あ()る()時、ドライブ・インで給仕をしてい()たはるみという女性と知()り合った。二郎は、バー“爽"で女の子をほしが()っているのを知ると、はるみを“爽"へ紹介()した。“爽()"はミシマ()・デパートの社長令嬢()爽子の経()営になるものなので、はるみを紹介して爽()子の歓心を買う()つもりだったのだ()。はるみ()は二郎の下宿に寝泊りするようになった。“爽"に()は鋳物会社の社長で岡という()常連がいた。会社の経営状態が思わ()しくなく、あせる気持をまぎらわすため、酔いつぶれるほど飲()むことがあった。二郎は、()爽子に頼まれて岡を家まで送っていったが、そこで岡家の長男の未()亡人・雅枝を知った。彼女を自分のために利用できる()と思い、近づい()た。はるみは、()爽子の勧めを断わりきれずに、石油()会社の常務・本堂の世話になっていた。二郎は彼女()の豪華なアパートで本堂に()会った。そして、翌日は湖畔へのドライブに加()った。爽子も一緒だったが、彼女のために二郎は技師だと偽っていた化の皮をはが()された。二郎は湖のボートで爽子を犯して復讐した。その時から、爽子との肉体関係が続けら()れた。岡が脳()出血で倒れた。二郎は、雅枝を()自分のものにすれば、いつかは鋳物会社も自分のものになると考えた。雅枝を温泉へ連れ出して結婚の()約束()をさせた。はるみは、本堂が東京の本社へ引きあげることに()なったので自由の身となり、二郎との結婚を考えてもいいと言った。しかし、二郎は鼻の先で笑うだけだった。岡鋳物会社が赤字のため石油会社に合併された。二郎にとって、雅枝は厄介な荷物にすぎなくなった。ヤケになった彼は、ちょっとした言葉のやりとりから上役と喧嘩し、デパー()トもクビになった。深夜、泥酔した二郎は“爽"にいた。爽子に「あんたって女を食いもの()にするしか能のない男なのよ。だからいつまでも一生飼い殺しにし()てあげるわ()」と嘲笑された。二郎は突然笑い出し、いつまでも笑()い続けていた。
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