昭和初期の福岡・筑豊炭鉱の落盤()事故で死んだ()豪気()な父・伊吹重蔵(仲代()達矢)の血を受け継いだ遺児・信介(田中健)は、義母タエ(吉()永小百合)や周囲の人々の慈愛の下、やがて青春の門を通り抜けていく。
五木寛之の代表作ともいえる長編大河小説の第1作『筑豊篇』を『キューポラ()のある街』などの名匠・浦山桐郎監督のメガホンで映画化した超大作。ここで彼は原作のテイストとは異()なるアプローチをいくつか試みており、特に貧困、差別といった戦()前戦後の社会問題や風俗性を原作以上に強調しつつ、ひとり()の青年の成長を丹念に()追()っていく。信介の幼な()じみ織江役()に、当時新人だった大竹()しのぶが()扮し、初々しくも見事な演技()を披露している。いくつかの大胆なシーンを果敢にこなし()た吉永も、本作で清純派からの脱皮に成功し()ている。(的田也寸志)